水没機指南書

水没機指南書 大切なiPhoneを水没させてしまったあなたに

毎日持ち歩くあなたのスマートフォン
トイレ・洗面台・風呂・雨・雪・水溜り・川・海・プール・ドブ・コーヒー・お茶・味噌汁・汗等、水没の危険は意外と多いものです。
ネットで検索した間違った情報で復旧率を下げてしまうその前にやってはいけないこと、修理に出す前にしておいて欲しい事をこのページに記載します。
基本iPhoneで話を進めますが、iPadの方は置き換えて読んでください。
Androidの方はは防水機体が多いのであまり役には立たないかもしれませんがイザという時のために覚えておいて損はありませんよ!!

やってほしい事

真水の場合

すぐに引き上げ、バッテリが取れる場合は外し、ティッシュに包みジップロック等の袋に入れてスマサポに問合せする。素早く大量のティッシュ等で表面の水分を吸いだしてやることで内部に入る水の量を減らしてあげてください。特にイヤスピーカとスリープボタンは水が入りやすく基板に近い為、大至急吸い出してください。

※バッテリが取れないiPhoneはボリュームボタン側を下向きにして立て、基盤に水が触れる事を避けて保管します。(iPhoneの基板はSIMカードスロット側にある為)ボタンの穴から水が抜けるので効果的です。

海水の場合

①すぐに引き上げ、バッテリが取れる場合は外し、塩分濃度を下げる為に真水で洗い、当日中にスマサポに持ち込む。時間が経過して乾燥するほど塩分濃度が上がり、電気を通す塩分と強力な腐食作用により基板が再起不能になります。
海水で真水洗浄を行っていない場合は3日とかからず基板上のチップがボロボロになり復旧率がかなり低下します。
どちらも出来ない場合はそのまま水道水で洗い、ZIPロック等の密閉できる容器に水を満たし、その中にiPhoneを漬け込み水分の蒸発をとにかく避けて持ち込み・発送まで保管します。
水に漬けたまま発送はできませんので、発送の際は水を抜いた後、ストローなどで内部の空気を吸い出し、真空パック状態にして濡れたまま発送下さい。
※手に持っているiPhoneがチラッと波で濡れたレベルの「海水濡れ」の場合は真水の時と同じ対応で構いません。

②どこに落ちたか、何に水没したか、何処が濡れたかを冷静に記憶しておく。
海水や洗浄剤入りのトイレ等は腐食スピードが速く、当日に持込されたお客様でもサビ・腐食が見られる事があります。
味噌汁やラーメンのスープが掛かった等塩分が多量に含まれている液体も同様です。また、ポカリスエット等のイオン飲料系やレモンティーも基板ダメージが大きいので急ぎの対応をお願いします。

③濡れたままで良いので、とにかく素早くスマサポに送付する。
もし、損傷が酷く修理不可の場合でも検証費用は無料なので往復の送料のみしか掛かりません。
水没の復旧は作業を開始するまでの時間が勝負です。一刻も早い持込・配送をお願い致します。

やってほしい事

やってはいけないこと

1 絶対に電源を入れない、充電しない

気持ちは分かります。ですが、水没してすぐのiPhoneの電源を入れる事は自殺行為です。
運良く電源が入っていつも通りの様に見えても、内部に入った水が毛細管現象で基板に向かって進んでいます。壊れなくて良かった・・・と思って使っていると、突然電源が落ちます。バックライトやCPU・WiFi等、高電圧で稼動している部品がショートした場合のダメージは深刻です。
ネットの情報を見て3日程度乾かしてバッテリが切れたと思い充電してしまう事もタブーです。完全に電源が落ちているiPhoneのバッテリが3日で空になる事はありません。正常に電気が流れない理由(腐食による内部ショート)があるから起動しないのです。
そこに無理やりACアダプタを接続すれば大ダメージとなりICチップが損傷します。最悪煙が出たり発火の危険があります。修理不能判定のお客様の殆どはコレをやってしまっています。
というわけで、水没したiPhoneの電源は絶対に入れたりACにつないではいけません。

2 自分で乾かさない

ネットで検索すると出てくる「乾燥剤を入れたジップロックに入れて暖かい所に3日ほど放置する」や「米びつに突っ込む」というのは、乾燥後の復旧率はただの「運」です。
逆に腐食を進行させたり、お米がイヤフォンジャック内に入り取り出しができなくなったり、そのお米が以後食べられなくなるリスクの方が高くお勧めできません。
水没した時にスリープの状態だった場合、画面表示がされていないだけで電流がまだ入っている場合があります。
その状態で水がロジックボード(基板)に触れると、電圧を安定させる為の電池(コンデンサ)がショートし内容物が溶出して腐食を引き起こします。
電源を切っていてもバッテリがつながっている限りショートの危険があります。
乾燥剤の吸湿スピードと基板腐食のスピードでは腐食の方が早い為、完全乾燥後に無事電源は入ったが画面がチラついたり、カメラが動かない・異常発熱等の後遺症が残る場合も多いです。
また、中に入った水が見えない状態での完全乾燥の見極めは非常に難しく、水分が残っているのに電源を入れてしまう失敗例も多いです。
iPhoneは電源が入らなくなった理由を取り除かない限り正常に起動する事はありません。
「乾かしたら治った」というのは電源が入らない理由が腐食では無く水の影響だけだったという運の良い人だけです。
また、ドライヤーで暖めて乾燥させるのも危険です。
水分に塩分や酸が含まれていた場合は、乾燥によって水分が蒸発すると濃度を上げて腐食が甚大なレベルになります。

3 水没したiPhoneを振らない

本体から空気の泡が出ないレベルにおいて水没し、すぐに引き上げた場合は、ドックコネクタ、イヤフォンジャック、イヤスピーカーメッシュ、スリープボタン、SIMカードスロット付近で表面張力により水分が止まっています。
水を出そうとiPhoneを振るとさらに基板方面へ水が移動し腐食・ショートの危険が高まります。
また、ドライヤーで暖めて乾燥させるのも危険です。
水分に塩分や酸が含まれていた場合は、乾燥によって水分が蒸発すると濃度を上げて腐食が甚大なレベルになります。

4 諦めない

「してはいけない事をやってしまった!」といっても復旧の確立はまだ残っています。
水没の修理は作業が完了するまで成功の可否は分かりません。何事も諦めたらそこで終わりです。
私も諦めずにお客様の水没修理作業に6時間以上に渡り拡大レンズと戦う事もしばしばです。
修理を依頼するか迷っている間にも水没したiPhoneは内部腐食していきます。
どうするか考えているよりもプロに任せる方が確実です。

やってはいけない事

いかがでしたでしょうか?
以上は水没修理作業を行っている生の情報です。
ネットの情報は無料で何とかする為の情報なので結構当てにならない部分もあり、この「水没機指南書」を読んだ方だけのアドバンテージになるのではないでしょうか。
「こんなに色々覚えてられないよ」という方、これだけ覚えてください。
“対処方法を思い出す暇があったらスマサポに送ってみる”
皆様のiPhoneが健全でありますように。